スコアリング・イントロダクション
CDPスコアリング基準は、公正な環境行動を通じたレジリエンスとネットゼロの構築のための自治体の移行を促進するように設計されています。スコアリングプロセスは、自治体にとって、気候変動対策および環境関連計画立案のためのフィードバックを得るための貴重な機会です。自治体は、スコアに基づいて、環境行動の進捗を他の自治体と比較し、改善すべき分野を特定することができます。
自治体の気候変動対策と環境行動を正確に反映するスコアを受け取るためには、できるだけ質問書に完全に回答することが重要です。質問書で報告されない行動または計画はスコアに反映されません。
スコアは非公表のままですが、CDPは、国際的メディアキャンペーンを通じて、気候変動対策のリーダーシップを示すAスコアに選定された自治体を表彰します。
CDPは、すべての言語で提出された回答をスコアリングします。英語による回答はAリストに選定されるための必要条件ではなく、回答の提出言語が自治体のスコアに影響を及ぼすことはありません。
2023年スコアリング基準における主な変更点
2023年シティ質問書
質問数や必要なデータポイントに関して、昨年の質問書からの大きな変更は本年はありません。本年の質問書でも、気候変動対策における最も重要なデータに重点を置くことと、報告に伴う労力を軽減することを考慮しました。質問書は、Race to Zero (レース・トゥ・ゼロ)、Race To Resilience(レース・トゥ・レジリエンス)、ICLEIイニシアチブ、世界首長誓約、WWFのワンプラネット・シティチャレンジ、およびNetZeroCitiesといった世界中で行われているイニシアチブに準拠しています。CDP-ICLEI Trackに報告することで、自治体はこれらのイニシアチブのコミットメントを満たすことができます。質問書は、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)にも準拠しています。CDP-ICLEI Trackに報告することで、自治体の気候変動対策への資金調達が促進され、投資家から自治体プロジェクトへの融資を受けるために必要な情報を整備することができま。
さまざまな自治体の状況を反映し、報告を簡素化するために、質問書には三つの経路(Pathway)があります。適切な経路を選択できるようにしたことで、すべての自治体に共通して回答要請する質問一式に加えて、自治体に関連性があり有益な場合のみ質問を追加することが可能になりました。(**C40先導都市には事前設定された質問書が表示されます。そのためC40先導都市に対しては質問書の経路(Pathway)選択は提示されないことにご注意ください)。
2023年は、スコアリング基準では、経路1(Pathway 1)に含まれる質問のみが評価の対象となります。これには、すべての自治体に対して回答要請されるデータポイントが含まれます。つまり、選択経路に関係なく、すべての自治体に対して、同じデータポイントに対して同じスコアリング基準が適用されます。経路2(Pathway 2)または経路3(Pathway 3)で表示される追加のデータポイント/質問、または各種プロジェクト固有のデータポイント/質問はスコアリングの対象となりません。
そのため2023年のCDPスコアは、ガバナンス、評価、計画立案、および行動の分野での気候変動の緩和および適応に関する主要質問(セクター指標を含む)の回答とその行動を反映します。
高まる野心
2023年の質問書に昨年から変更が少ないことを反映し、スコアリング基準についても昨年からの変更は少なく、気候変動による最も壊滅的な影響を回避するために、地球の気温上昇を産業革命前より1.5℃以内 に抑える取り組みに引き続き対応しています。パリ協定が掲げる目標の達成に必要な気候変動対策を強化することを引き続き重視しつつ、スコアアリング基準の有用性を高めるために、すべてのスコアバンドの判定基準を合理化しました。
2023年の質問書における大きな変更点の一つは、科学に基づく目標をさらに重要視し、気候関連ハザードに対処する目標設定や目標の進捗状況の確認を自治体に奨励する点です。
スコアバンドと閾値
気候リーダーシップに向けて前進するために、自治体の進捗段階を表す4つのスコアバンドをもって自治体の回答を評価します。スコアバンドは次のとおりです:
- 情報開示(D-またはD):情報開示スコアバンドの自治体は、気候変動とその影響を削減する重要性を理解し、報告する道のりを開始したところです。これらの自治体は気候変動対策を推進するためのデータ収集の価値を理解していますが、必要な情報を得るための構造またはリソースが整っていない可能性があります。情報開示バンドの自治体は、気候変動の影響とリスクの測定状況に関して報告しています。
- 認識(C-またはC):認識スコアバンドの自治体は、気候変動の主なリスクと影響を評価中です。これらの自治体は、気候変動が自治体に及ぼす主な影響の全体的な理解のために、評価の実施と影響の測定を開始しており、それらを削減する対策/行動を講じ始めています。
- マネジメント(B-またはB):マネジメントバンドの自治体は、気候変動の主なリスクと影響に関するデータを収集および管理し、これらの影響に適応し、削減する対策/行動を講じています。これらの自治体は、リスクと影響を理解するために主要なステークホルダーと協働しており、緩和および適応するための計画を現時点で策定済です。
- リーダーシップ(A-またはA):リーダーシップ自治体は、適応と緩和の両方におけるベストプラクティス基準を示しており、野心的な目標を設定し、その目標達成に向けて進捗しています。リーダーシップバンドの自治体には、戦略的で全体的な計画があり、講じている対策/行動が、自治体の人々、企業、組織に対する気候変動の影響と脆弱性を削減することを確実にしています。
次の上位レベルに進むためには、スコアにおいて自治体は各スコアバンドで設定される閾値を超える必要があります。例えば、情報開示スコアの自治体は、次のスコアバンドである認識バンドのスコアリングを受けるためには、情報開示バンドにおける十分なポイントを獲得してその閾値を超える必要があります。 閾値を超えるために、各スコアバンドで設定されるすべての基準を満たす必要はありません。しかし、満たす基準が多ければ多いほど、自治体が閾値を超えるのに十分なポイントを獲得し、次のスコアバンドでスコアリングされる可能性が高くなります。
レベル | 閾値 | スコアバンド |
情報開示 | 1-44% | D- |
45-79% | D | |
認識 | 1-44% | C- |
45-79% | C | |
マネジメント | 1-44% | B- |
45-79% | B | |
リーダーシップ | 1-59% | A- |
60-100% | A |
CDPは暫定閾値を設定していますが、スコアレベル毎の回答内容の平均的なバランスを考慮するなどした結果、スコアリング期間中に閾値を修正する可能性があります。CDPは、世界の自治体の進捗を適切に示すために、スコア決定前の任意の時点で、スコアバンドの閾値を調整することとします。
必須条件
認識、マネジメント、およびリーダーシップのスコアバンドには、各バンドでスコアされるために満たさなくてはならない「必須条件」があります。例えば、その他のすべての基準が満たされているかどうかに関わらず:
- 認識スコアを獲得するには、まず認識レベルの必須条件が満たされている必要があります;
- マネジメントスコアを獲得するには、認識とマネジメントの両レベルの必須条件が満たされている必要があります;
- リーダーシップスコアを獲得するには、認識、マネジメント、およびリーダーシップの必須条件が満たされている必要があります;
- Aスコアを獲得するには、認識、マネジメント、およびリーダーシップの必須条件と、それに加えてAリストの必須条件が満たされている必要があります。
自治体の実際の計画立案と行動を正確に反映するスコアを獲得するため、自治体は2023年シティ質問書に対する回答を提出する前に、必須条件とされる文書が添付されていることを確認する必要があります。
2023年の必須条件
必須条件における2023年の唯一の変更は、Aリスト必須条件に関する変更です。2023年の質問書では、自治体が「A」評価を得るためには長期的および中期的の両方の目標において、科学に基づいた目標を報告することが求められます。
認識レベルの必須条件
C-またはCのスコアを得るための必須条件は次の通りです:
- 質問1.2で気候ハザードを報告する
- 質問1.1において、少なくとも今後2年以内に気候リスクと脆弱性の評価に取り組む予定であると報告している
- 自治体全体のインベントリがあり、質問2.1aでそのインベントリを添付しているか、そのウェブリンクを記入している
- 単独の緩和計画、単独の適応計画、または統合された気候計画のいずれかがあり、質問7.1aで計画を添付しているか、そのウェブリンクを記入している
- 気候リスクと脆弱性の評価があり、質問1.1aで評価を添付しているか、そのウェブリンクを記入している
- 質問4.1aで適応目標を完全に報告している
- 質問5.1aで排出削減目標を完全に報告している
- 単独の緩和計画、単独の適応計画、または統合した気候計画のいずれかがあり、質問7.1aで計画を添付しているか、そのウェブリンクを記入している
- 気候変動の最悪の影響を回避するための最新科学に整合した目標を報告することで、目標設定におけるリーダーシップを示す。科学に基づいた目標は、長期的(2050年まで)ネットゼロ目標と、地球温暖化を1.5℃に抑えることの公正な分担に整合した中期的目標の両方を含む必要があります。2023年の質問書では、自治体が「A」評価を得るために長期的と中期的の両方の目標において、科学に基づいた目標を報告することが求められています。
- 回答を「公開」提出する
- 今後、添付資料に関する判定基準を厳格化する可能性もあります
- 全般スコアは、質問書回答に記載された情報に基づき、気候関連の情報開示および実績の全体的なレベルを示します。;
- 適応スコアは、適応関連の質問に対して回答された情報に基づき、気候関連の情報開示および実績のレベルを示します。;
- 緩和スコアは、緩和関連の質問に対して回答された情報に基づき、気候関連の情報開示および実績のレベルを示します。
マネジメントレベルの必須条件
B-またはBのスコアを得るための必須条件は次の通りです:
リーダーシップの必須条件
A-のスコアを得るための必須条件は次の通りです:
-「完全に報告している」とは具体的には次のことを報告している必要があります: 適応目標、目標が対処する気候ハザード、目標の達成される目標年がすべて記入されており、将来の目標年を報告している(過去の年になっていない)。
目標の種類が基準年排出量(総量);基準年原単位;またはベースラインシナリオである場合:
- 「完全に報告している」とは次のことを報告している必要があります: 目標の種類、自治体の区域と比べた目標の対象区域、目標を達成するために現在活用中または活用される予定の炭素クレジット、基準年、目標年、排出量の削減割合、目標年の実質排出量、がすべて報告されており、将来の目標年を報告し(過去の年になっていない)、自治体の区域と比べた目標の対象区域が「同じ」または「大きい」と報告されている。
目標の種類が固定水準である場合:
- 完全に報告しているとは次のことを報告している必要があります: 目標の種類、自治体の区域と比べた目標の対象区域、この目標を達成するために現在活用中または活用される予定の炭素クレジット、目標年、目標年の実質排出量がすべて報告されており、将来の目標年を報告し(過去の年になっていない)、自治体の区域と比べた目標の対象区域が「同じ」または「大きい」と報告されている。
Aリスト必須条件
Aを得るために、自治体は次のことが必要です:
2023年に自治体が受け取るスコア
スコアリングのための回答締め切りまでに2023年シティ質問書の回答を提出する自治体は、以下のスコアを受け取ります:
下表は、質問書のどのセクションが、適応または緩和のどちらのサブスコアで評価されるかを示します。
質問書のセクション | サブスコアの対象 |
---|---|
人口統計/地理データ | 適応と緩和の両方 |
気候リスクと脆弱性 | 適応 |
排出インベントリ | 緩和 |
エネルギー | 緩和 |
輸送 | 緩和 |
廃棄物 | 緩和 |
公衆衛生 | 適応 |
上下水道・衛生 | 適応 |
食料 | 適応 |
適応目標 | 適応 |
緩和目標 | 緩和 |
セクター目標 | 緩和 |
気候行動計画立案 |
適応と緩和の両方 |
資金調達 |
適応と緩和の両方 |
適応策 | 適応 |
緩和策 | 緩和 |